立ち退きQ&A

借主の同意なく鍵を変えたり,荷物等を処分しても良いですか。

家賃滞納・用法違反・近隣トラブルによる立ち退き交渉

家賃の滞納している賃借人、ペット飼育禁止にも関わらずペットを飼育している賃借人、ペット飼育OKだが一晩中吠え続けているペット、住居専用にもかかわらずオフィスとして利用している賃借人・・・・など、賃貸人(オーナー)としては、賃貸借契約を解除したいし、立ち退いてほしいと考えるケースは大なり小なりあると思います。

 

ただ、賃貸借契約の解除は、売買契約などと異なり、オーナーと入居者が継続的に付き合っていかなければならない契約であって、双方の信頼関係が破壊されたと認められる事情が無い限り、ただ「契約書の●条に違反しているから立ち退いてくれ!」と言ってもなかなかその主張は通りません。また、裁判手続きを行うには費用も時間もかかることが一般的です。

 

そのため、賃貸人(オーナー)が、まずは、話し合いの解決を模索して交渉しますが、それが功を奏さないと、実力をもって、立ち退き手続きを行うケースはこれまで多く見受けられます。このような法的な手続きを行わずに強制的に立ち退き手続きを行うことを「自力救済」といいます。

具体的には、鍵を無断で交換する、荷物を搬出して外に置く行為が多く見受けられます。

 

自力救済は、例外的な場合にのみOK

そんな自力救済について判断をした、最高裁判所の裁判例を紹介します。

「私力の行使は、原則として法の禁止するところであるが、権利に対する違法な侵害に対抗して現状を維持することが不可能又は著しく困難であると認められる緊急やむを得ない特別の事情が存する場合においてのみ、その必要の限度を超えない範囲内で、例外的に許されるものと解することを妨げない。」として、自力救済は極めて例外的な場合にしか認められないものであることを明らかにしています(最高裁昭和40年12月7日判決・判例タイムズ187号105頁)。

例えばですが、建物が倒壊しそうだから荷物を全部搬出したとか、火事が起きたから消防のため荷物を外に出したなど、極めて例外的な緊急避難と呼べるようなケースではないと自力救済が認められないということです。

 

そして、このように自力救済が禁止されているため、自力救済により追い出された元賃借人からは賃貸人(オーナー)に対して、損害賠償請求を求める事案が多く発生しており、結果として、賠償責任が認められている事例が多くあります。

1.認められた事例

大阪高裁平成23年6月10日判決では、賃貸人から貸室の管理を委託されている管理会社の従業員が、当該貸室内にあった賃借人の家具等を搬出し玄関の鍵を交換して賃借人に退去を余儀なくさせたとして、賃貸人及び管理会社に対する賃借人の損害賠償請求が認められています。

東京地裁平成24年9月7日判決では、家賃保証会社が賃貸物件の鍵を付け替えるなどして賃借人の占有を排除して、賃貸物件内の動産を撤去処分した行為について、賃借人から家賃保証会社及びその代表取締役に対する損害賠償請求が認められています。

2.認められなかった事例

東京地裁平成16年6月2日判決では、賃貸人が賃料不払いを理由に賃貸借契約を解除した後に、建物を鍵を交換した事案において、「違法な自力救済」であることは認めたものの、賃借人に損害が発生しているとはいえないとして、損害位賠償請求を認めませんでした。

最後に

立ち退き交渉と自力救済について考察してきましたが、自力救済は原則として禁止されておりますので、そのようなことが起きる前に、専門家に相談して迅速に対処することが遠回りのようで早い解決が実現できるといえます。

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