立ち退きの手続について

立ち退き手続きの裁判の流れ(賃料未納の場合)

手続きについて

賃料滞納により立ち退きを検討した場合、どのような手続きとなるのか。まずは全体像を眺めた後、個別の手続きをご紹介いたします。

1.全体像

手続きの全体の流れとしては、以下の通りです。賃料滞納が始まった段階で迅速に対応を開始することが効果的です。

相談・対策検討

賃料支払催告と解除通知を発送(内容証明郵便)

&仮処分の検討(別記事)

裁判

明渡を求める強制執行手続きの申立(別記事)

残置物の処分等(別記事)

終了

 

 

2.相談と対策の検討

まずは、対象物件の情報、入居者の情報、賃料未納金額、未納期間、交渉経過等を弁護士がヒアリングをいたします。この相談時に、手続きの流れや弁護士費用・裁判費用等をご案内いたします。
特に、弁護士としては、立ち退きまでの期間を考えるにあたり、「なぜ、賃借人が、家賃を払わにようになったのか」という経過(理由)をヒアリングさせていただきます。それは、単純な生活資金をねん出するのができないのか、もしくは、賃貸人(オーナー)にも落ち度があるのかを確認する必要があるからです。例えば、必要な修繕を賃貸人(オーナー)が行わないため、賃借人が賃料を支払っていない、などの理由においては、単純な立ち退き手続きとは異なるからです。
以下の前提としては、生活資金がねん出できないために賃料未納が続いてるケースを念頭に考えます。

 

3.催告と解除の通知(内容証明郵便の送付)

家賃滞納をしている賃借人に対して、内容証明郵便で支払いの催促をします。郵便局が、郵送する郵便の内容とその日付を証明してくれるもので、のちの紛争や裁判の際に証拠となるものです。
文書の内容は、滞納家賃の支払を求める(催告)するとともに、到着から1週間程度の期間内に支払が確認できない場合には、賃貸借契約を解除することを盛り込みます。

※賃料未納期間等を勘案して解除の有効性が判断されるため、「解除に必要な家賃滞納期間は?」「無催告解除特約の有効性」等の記事もご覧ください。

なお、内容証明郵便は、賃貸人(オーナー)様から通知も可能ですし、弁護士が代理人として行うことも可能です。通知書作成等のバックアッププランもございますので、お気軽にお問合せください。内容証明通知により支払いがなされる場合もありますが、滞納が繰り返されている場合には、今後の対応策も検討する必要があります。

 

4.裁判

(1)訴状を提出してから第1回裁判期日が決まるまで

裁判を起こすには、賃貸借契約が賃料未納を理由として解除されたことを根拠とする立ち退きを求める内容の訴状を裁判所に提出することとなります。裁判所に提出する際には、証拠資料、例えば、賃貸借契約書、賃料未納履歴、内容証明郵便の発送記録、交渉記録等も併せて提出いたします。

訴状を裁判所に提出すると、2週間ほどして裁判所から第1回の裁判期日が指定されます。第1回裁判期日は、訴訟提訴日から概ね、1か月~1か月半後に指定されることが多いですが、当職らでは、賃料滞納による損害拡大を防ぐため、可能な限り早い期日の指定を裁判所と協議を行います。
弁護士に手続きを依頼された場合には、依頼者である賃貸人(オーナー)は、一緒に裁判所に出向く必要はございません。もちろん、希望がある場合には同行いただくことも可能です。

(2)第1回期日が決まってから裁判期日が始まるまで

第1回期日は、あくまで、原告(立ち退きを求める側)と裁判所との間で決定されるため、第一回裁判期日が開かれることを被告(賃借人側)に通知しなければなりません。この通知は、裁判所が行いますが、この通知が届かないと裁判を開くことができないルールとなっております。

通常は、賃貸物件が被告の住所地ですから、裁判所からの通知が届くことが普通ですが、郵送時に不在であったり、書類に紛れて不在票がほっぽかれることがあります。この場合には、裁判所が、改めて、休日等に再配達する郵便を出したり、勤務先を調査して勤務先に通知したりすることとなりますが、それでも受け取らない場合があります。

この場合、今度は、原告側において、相手の居住情報の調査が必要となります。そして、その調査の結果、居住はしているが受取を拒否している場合には、その内容の報告書を裁判所に提出して、改めて裁判所から通知を再送します。この場合、相手が受け取らなくても、発送した時点で、送達が完了したとみなされます。これを付郵便送達といいます。

一方で、居住調査の結果、住んでいることがわからず(夜逃げ等)、その後もどこに住んでいるかわからない場合には、公示送達の申し立てを行います。これは、裁判所の掲示板に通知書を一定期間掲示することで送達を擬制するものです。

 

(3)第1裁判期日当日

裁判での手続きのため、相手方(賃借人)側で言い分があれば、その言い分を反論することとなりますが、賃料滞納の場合には、相手方(賃借人)にとって争う余地がないため、相手方(賃借人)からは、特に反論がなされず、また、裁判所に出頭しないことがほとんどです。裁判手続きで、相手方が何ら反論しない場合には、原告(賃貸人側)の請求を認めたとして法律上扱われるため、原告の請求通りの判決が出ます。

相手方が出頭しないような賃料滞納案件では、判決言い渡し日は、第1回裁判期日から1~2週間程度先の期日となります。

一方で、相手方(賃借人)が争う場合には、裁判は1回では終わりません。例えば、建物の修繕を行わないため賃料の支払いを停止している、適切な管理を行わないと反論する場合です。もちろん、具体的な証拠もなく、特別な理由もないのに引き延ばそうとする場合もありますが、その場合には、原告(賃貸人側)にて早期の終結を裁判所に求めることとなります。

 

(4)判決

民事裁判での判決期日は、当事者(弁護士も含みます)の出頭が無くても判決が言い渡されます。そして、判決書の作成ができ次第、裁判所に受領しに行きます。

賃料未納による判決では「仮執行宣言」がつけられることが多いです。これは、判決言い渡し後、相手方(賃借人)に判決が送達されてから2週間経過して、初めて正式に手続きは終了となるのですが、この終了を待たずに強制執行してもよいですよという宣言です。

判決がくだされたにも関わらず、立ち退きを行い場合には、いよいよ、強制執行の申し立てを行うこととなります。こちらの手続きは、また、別途、「立ち退き手続きの強制執行の流れ」をご参考にください。

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