立ち退きQ&A

弁護士でない人に代理で立ち退き交渉をお願いしても良いですか

1.立ち退き手続きの法的な意味

賃貸人(オーナー)が立ち退きを求める場合に、円満に行われる場合もあれば難航する場合もあります。このとき、賃貸人(オーナー)目線からすれば、「不動産会社さん(管理会社)、全部やっといてよ」と思われることが多いですし、実際に不動産会社による立ち退き交渉は日々行われるのが現状です。

一方で、立ち退きを求める場合には、少なからず「交渉」行為が介在しますが、ここで、弁護士法第72条では「弁護士資格を持たない者が、報酬を得る目的で、訴訟事件やその他一般の法律事件に関して代理や和解その他の法律事務を業として取り扱ってはいけないという原則を定めています。」として、。そうすると、不動産会社による立ち退き交渉は弁護士法に反することとなってしまうのでしょうか。いわゆる、弁護士でない者が弁護士行為を行うことを「非弁」といいますが、非弁に該当してしまうのか、考えてみます。

 

2.非弁行為とは

弁護士法72条を分析すると、弁護士法違反になるかどうかは、①「法律事件」であるか否か、②法律事務を行ったといえるか否か、そして、その不動産業者が、それらの行為を、③「報酬」を得る目的で、④「業として」行ったのか、という点から判断されることになります。

(1)①「法律事件」と②「法律事務」について

裁判例によると、①の「法律事件」とは、「法律上の権利義務に関し争いや疑義があり、又は新たな権利義務関係の発生する案件をいうもの」とされ、②の「法律事務」とは、それらの法律上の権利義務に関し争いや疑義があり、又は新たな権利義務関係の発生する案件について法律上の効果を発生、変更する事項の処理をいうとされています。

そして、裁判例では、「立ち退き交渉」に関する業務が①「法律事件」もしくは「法律事務」に該当すると判断しています。

※「賃貸人の代理人として、その賃借人らとの間で建物の賃貸借契約を合意解除し、当該賃借人らに建物から退去して明渡してもらうという事務をすること」(広島高判平成4年3月6日判時1420号80頁)。

(2)③「報酬を得る目的」について

次に、立ち退き交渉によって、不動産業者が報酬を得ているかどうかが争点となります。

裁判例では、「報酬を受けるについては、必ずしも事前に報酬支払の特約をした場合に限らず、処理の途中あるいは解決後に依頼者が謝礼を持参することが通例であることを知り、これを予期していた場合でも、報酬を得る目的があるというを妨げない」、また、「報酬を得る主観的な目的があれば足りる」旨判示しています。

不動産会社は管理料等の名目でオーナーから日々報酬を得ていることが多く、また、立ち退きにより事後的な付き合いが継続できることなどをも考えると、この点は慎重に判断する必要があるでしょう。

(3)④「業として」について

裁判例では、「業とする」ということの意義について、「反覆的に又は反覆継続の意思をもって法律事務の取扱等をし、それが業務性を帯びるに至った場合をさすと解すべきである」とし(最判昭和50年4月4日民集29巻4号317頁)、「反覆継続の意思が認められれば、具体的になされた行為の多少も問うところではない」(最判昭和34年12月5日刑集13巻12号3174号)としています。不動産管理会社としては日々、立ち退き交渉等を行える立場にあると考えれば、この要件には該当してしまうと思います。

 

3.非弁行為に該当するとどうなるか(刑事罰・民事責任)

不動産管理会社が行う立ち退き交渉が非弁行為に該当すると判断された場合、弁護士法72条違反として、刑事告訴される可能性があります。この場合、懲役2年以下、もしくは、300万円以下の罰金が課される可能性があります(弁護士法第77条3号)。

そのほか、非弁行為によって決まった合意内容についても、無効と判断している裁判例もあります。そうすると、せっかく時間をかけて立ち退きの合意まで至ったのに、非弁を理由として合意の無効が主張されたら目も当てられません。この場合、不動産管理会社は、刑事罰が課されるほか、賃貸人(オーナー)からも無用な時間がかかったため、得られるべき賃料が得られなくなったことを根拠に損害賠償請求がなされる可能性もあります。

 

4.おわりに

以上の通りですので、不動産管理会社が行う立ち退き交渉については、非弁行為と捉えられる可能性もありますので、慎重な判断を要します。

弁護士であれば問題なく業務を遂行できますので、まずは、立ち退きを考えられた場合には、お気軽にご相談いただければと思います。

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